- 令114条区画の対象となる建築物の用途は何?どの壁が対象なのか?
- 令114条区画壁は天井裏まで立上げが必要なのか?配管の区画貫通処理は必要か?
- 令114条区画壁を免除できる方法はないか?H26告示860号の内容は?
このような疑問を持ったかたは多いのではないでしょうか。
たくみ です。
設計事務所、指定確認検査機関に長年勤めた経験をもとに難解な建築基準法について解説していきます。
令114条の区画は、第1項にて長屋・共同住宅の用途の住戸間の壁が対象であり、第2項は学校・病院・ホテル・寄宿舎・児童福祉施設などの用途について、3室以下かつ100㎡以下の教室・就寝室など及び避難経路・火気使用室の壁が対象です。この対象部分を界壁や防火上主要な壁で区画することが必要となっています。令114条第5項で防火上主要な壁は天井裏まで立上げが必要となり、その壁を貫通する配管などは区画貫通処理をする必要があります。
令114条区画の内容については、「建築物の防火避難規定の解説2016(第2版)」や「基本 建築関係法令集[法令編][告示編]」の書籍で必ず確認しましょう。
令114条区画の対象となる用途や対象となる部分について
令114条区画は、共同住宅や保育園等の建築物で火災が起きた時に火を拡大させないための防火上主要な間仕切壁の事をいいます。防火上主要な間仕切壁の範囲は、火災時に人々が安全に避難できること、火災の急激な拡大を抑えること等を目的に一定単位ごとの区画及び避難経路とその他の部分との区画をするものです。
令114条第1項で対象となるものは以下の用途です。
- 長屋:各住戸の界壁(遮音性能のあるもの)が対象です。
- 共同住宅:各住戸の界壁(遮音性能のあるもの)が対象です。
住戸と廊下などの避難経路間の壁は対象外ですが、共同住宅の住戸にあっては200㎡以内に防火区画すれば、排煙の免除(令126条の2第1項1号)ができるので、住戸と廊下間の壁も防火区画する場合が多いと思います。その場合、上図廊下内の二重点線部分は不要です。
なお、界壁の構造は、建築物の構造種別により要求される構造が異なります。まとめると以下の表になります。
建築物の構造種別 | 界 壁 |
耐火建築物 | 耐火構造 |
準耐火建築物及びその他の建築物 | 準耐火構造 |
令114条第2項で対象となるのは以下の用途です。
- 学校:3室以下かつ100㎡以下の教室等相互を区画する壁及び教室等と避難経路(廊下、階段等)を区画する壁が対象です。
- 病院、児童福祉施設等(老人ホーム・保育所等):3室以下かつ100㎡以下の保育室・遊戯室等相互を区画する壁及び保育室等と避難経路(廊下、階段等)を区画する壁が対象です。
- ホテル・寄宿舎:就寝室等の相互間の壁で、3室以下かつ100㎡以下に区画する壁及び就寝室等と避難経路を区画する壁。
- 火気使用室:上記の用途で、火気使用室(IH使用室ではない)とその他の部分を区画する壁。
3室以下かつ100㎡とありますが、無理に室面積を100㎡以下にしなくてもよいです。このことは「建築物の防火避難規定の解説」に(100㎡を超える室にあってはこの限りでない)と記載があります。
防火上主要な間仕切壁の構造は、建築物の構造種別により要求される構造が異なります。以下の表になります。
建築物の構造種別 | 間仕切壁の種別 |
耐火建築物 | 耐火 |
準耐火建築物イ-1 | 1時間準耐火 |
準耐火建築物イ-2 | 45分準耐火 |
準耐火建築物ロ-1 | 45分準耐火 |
準耐火建築物ロ-2 | 45分準耐火・材料準不燃 |
令114条区画は天井裏まで区画する必要があるの?
火災時に建物内の人々が火災の拡大に先んじて安全に避難できるように、防火上主要な間仕切り壁については耐火構造又は準耐火構造とすることを義務付けたものであるため、この間仕切り壁は、スラブ上から小屋裏又は天井裏まですき間なく区画しなければなりません。
令114条第3項や第4項について
令114条第3項については、建築面積が300㎡を超える建築物の小屋組が木造の場合に桁行間隔12m以内ごとに小屋裏に準耐火構造の隔壁を設ける必要があるという規定です。ただし、主要構造部が耐火構造であったり、天井が強化天井などの場合は除かれます。
この規定は、ホント よく忘れがちです。
令114条第4項は、延べ面積がそれぞれ200㎡を超える建築物間に耐火建築物以外のもの相互を連絡する渡り廊下で、その小屋組が木造であり、かつ、桁行が4mを超えるものは、小屋裏に準耐火構造の隔壁を設ける必要があります。これは、学校の渡り廊下などでかかってくる規定となります。
令114条区画の壁の扉や開口部に制限はあるの?
令第114条には開口部への制限はないため、防火設備等にする必要はありません。ただし、令114条第5項で、天井裏で配管等がこの防火上主要な間仕切壁を貫通する場合は、防火区画貫通処理をしなければなりません。
防火上主要な間仕切壁は免除できないの?
防火上主要な間仕切壁を天井裏まで達しめる事を緩和する告示があります。
- 天井の全部が強化天井である階:強化石こうボード2枚張りで、厚さの合計が36㎜以上
- 準耐火構造の壁または防火設備で区画されている部分で、天井が強化天井であるもの
- 強化天井を設備配管(給水管・配電管など)が貫通する場合は、貫通処理を行う
✔ 平成28年告示694号は、以下によります。(下記をクリックして下さい)
強化天井の構造方法を定める件(国土交通省告示第694号)
建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第百十二条第二項第一号の規定
に基づき、強化天井の構造方法を次のように定める。
強化天井の構造方法を定める件
建築基準法施行令(以下「令」という。)第百十二条第二項第一号に規定する強化天井
の構造方法は、次に掲げる基準に適合するものとする。
一 強化せっこうボード(ボード用原紙を除いた部分のせっこうの含有率を九十五パー
セント以上、ガラス繊維の含有率を〇・四パーセント以上とし、かつ、ひる石の含有
率を二・五パーセント以上としたものに限る。)を二枚以上張ったもので、その厚さ
の合計が三十六ミリメートル以上のものが設けられていること。
二 給水管、配電管その他の管が強化天井を貫通する場合においては、当該管と強化天
井との隙間をロックウールその他の不燃材料で埋めるとともに、当該管の構造を令第
百二十九条の二の五第一項第七号イからハまでのいずれかに適合するものとすること。
この場合において、同号ハ中「二十分間(第百十二条第一項から第四項まで、同条第
五項(同条第六項の規定により床面積の合計二百平方メートル以内ごとに区画する場
合又は同条第七項の規定により床面積の合計五百平方メートル以内ごとに区画する場
合に限る。)、同条第八項(同条第六項の規定により床面積の合計二百平方メートル
以内ごとに区画する場合又は同条第七項の規定により床面積の合計五百平方メートル
以内ごとに区画する場合に限る。)若しくは同条第十三項の規定による準耐火構造の
床若しくは壁又は第百十三条第一項の防火壁にあつては一時間、第百十四条第一項の
界壁、同条第二項の間仕切壁又は同条第三項若しくは第四項の隔壁にあつては四十五
分間)」とあるのは、「一時間」と読み替えるものとする。
三 換気、暖房又は冷房の設備の風道が強化天井を貫通する場合においては、当該風道
の強化天井を貫通する部分又はこれに近接する部分に令第百十二条第十六項に規定す
る構造の特定防火設備を設けていること。
四 防火被覆の取合いの部分、目地の部分その他これらに類する部分が、当該部分の裏
面に当て木が設けられている等天井裏への炎の侵入を有効に防止することができる構
造であること。
附 則
この告示は、平成二十八年六月一日から施行する
令114条第2項の規定において、防火上主要な間仕切壁自体を条件によっては免除できる場合が2つあります。
・条件1:消防法によるスプリンクラー設備の設置した建物で、床面積200㎡以下の階又は床面積200㎡以内ごとに準耐火構造の壁等で区画した部分(令112条4項より)
・条件2:小規模で避難が容易な建物で、居室の床面積が100㎡以下の階又は居室を床面積100㎡以内ごとに準耐火構造の壁等で区画した部分に自動火災報知設備等を設置したもの。その他にも条件がありますが、少し難解なので平成26年国土交通省告示860号をご覧ください。
✔ 平成26年告示860号は、以下によります。(下記をクリックして下さい)
間仕切壁を準耐火構造としないこと等に関して防火上支障がない部分を定める件(国土交通省告示第860号)
建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第百十二条第二項及び第百十四
条第二項の規定に基づき、間仕切壁を準耐火構造としないこと等に関して防火上支障がな
い部分を次のように定める。
間仕切壁を準耐火構造としないこと等に関して防火上支障がない部分を定める件
建築基準法施行令第百十二条第二項及び第百十四条第二項に規定する防火上支障がない
部分は、居室の床面積が百平方メートル以下の階又は居室の床面積百平方メートル以内ご
とに準耐火構造の壁若しくは建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二条第九号の
二ロに規定する防火設備で区画されている部分(これらの階又は部分の各居室(以下「各
居室」という。)に消防法施行令(昭和三十六年政令第三十七号)第五条の六第二号に規
定する住宅用防災報知設備若しくは同令第七条第三項第一号に規定する自動火災報知設備
又は住宅用防災警報器及び住宅用防災報知設備に係る技術上の規格を定める省令(平成十
七年総務省令第十一号)第二条第四号の三に規定する連動型住宅用防災警報器(いずれも
火災の発生を煙により感知するものに限る。)を設けたものに限る。)で、次の各号のい
ずれかに該当するものとする。
一 各居室から直接屋外への出口等(屋外への出口若しくは避難上有効なバルコニーで、
道若しくは道に通ずる幅員五十センチメートル以上の通路その他の空地に面する部分
又は準耐火構造の壁若しくは建築基準法第二条第九号の二ロに規定する防火設備で区
画されている他の部分をいう。以下同じ。)へ避難することができること。
二 各居室の出口(各居室から屋外への出口等に通ずる主たる廊下その他の通路(以下
「通路」という。)に通ずる出口に限る。)から屋外への出口等の一に至る歩行距離
が八メートル(各居室及び通路の壁(各居室の壁にあっては、床面からの高さが一・
二メートル以下の部分を除く。)及び天井(天井のない場合においては、屋根)の室
内に面する部分(回り縁、窓台その他これらに類する部分を除く。)の仕上げを難燃
材料でした場合又は建築基準法施行令第百二十八条の五第一項第一号ロに掲げる仕上
げとした場合は、十六メートル)以下であって、各居室と通路とが間仕切壁及び戸(ふ
すま、障子その他これらに類するものを除き、常時閉鎖した状態にあるか、又は火災
により煙が発生した場合に自動的に閉鎖するものに限る。)で区画されていること。
附 則
この告示は、公布の日から施行する。
附 則 (平成二八年四月二五日国土交通省告示第七〇七号)
この告示は、平成二十八年六月一日から施行する
まとめ
- 令114条第1項は、長屋・共同住宅の用途の住戸間の壁が対象である。
- 令114条第2項は、学校・病院・ホテル・寄宿舎・児童福祉施設などの用途について、3室以下かつ100㎡以下の教室・就寝室など及び避難経路・火気使用室の壁が対象となる。
- 令114条第3項は、建築面積が300㎡を超える建築物の小屋組が木造の場合に桁行間隔12m以内ごとに小屋裏に準耐火構造の隔壁を設ける必要がある。
- 114条第4項は、延べ面積がそれぞれ200㎡を超える建築物間に耐火建築物以外のもの相互を連絡する渡り廊下で、その小屋組が木造であり、かつ、桁行が4mを超えるものは、小屋裏に準耐火構造の隔壁を設ける必要がある。
- 令114条第5項は、防火上主要な壁は天井裏まで立上げが必要となり、その壁を貫通する配管などは区画貫通処理をする。
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