- 法22条区域とはどのような区域か?すべての場所でかかるのか?
- 法22条区域の具体的な規制の内容は何?
- 法22条区域内の建築物は全て対象となるのか?
- 法22条区域内の木造の建築物は、外壁にも規制がかかる?開口部も対象か?
このような疑問で設計の手が止まったり、確認申請の手続きがスムーズに進まなかった事はないですか?
私も設計事務所時代に木造建築物の確認申請を市役所に出した時、建築指導課から屋根の不燃性や外壁の防火構造について書きなさいと言われて、何をどう書けばいいのか悩みました。(当時の建築指導課の担当者は怖くて・・・)
たくみ です。
設計事務所、指定確認検査機関に長年勤めた経験をもとに難解な建築基準法について解説していきます。
この記事では、「法22条区域」内での建築物への規制内容や免除できる建築物などを解説します。この記事を読むと、「法22条区域」内の建築物の設計・確認申請がスムーズに行えるようになると思います。
結論からいうと、都市計画区域内の防火・準防火地域を除く、大多数の地域が「法22条区域」に該当し、「法22条区域」内の建築物は、屋根を不燃性能材料で葺いたり、かつ、木造建築物ならば、延焼のおそれのある部分の外壁の構造を防火構造などで造る事(開口部は対象外)などにより、火災の拡大を防止する事を目的に、特庁が指定する区域のことを一般に「法22条区域」と呼びます。
法22条区域とはどのような区域?
建築基準法第22条の指定区域(法22条区域)については、防火地域および準防火地域以外の地域において、広域的な防火対策を図るために、一般の木造市街地などにおいて、特定行政庁が指定することになっています。ちなみに、法22条地域とはいいません。
この区域の特徴としては、特定行政庁が指定をする場合は、あらかじめ、都市計画区域内のある区域については、都道府県都市計画審議会または市町村都市計画審議会の意見を聞き、一部の区域では関係市町村の同意を得なければなりません。この区域は普通都市計画区域内のほとんどすべての市街地、集落が対象になっています。
なお、建築物が(敷地が_ではない)指定区域の内外にわたる場合の措置として、その全部について法22条区域内の建築物として制限がかかります。(建基法24条)
法22条区域の具体的な規制の内容は?
「法22条区域」内の規制の目的は、建築物の屋根を火災の火の粉から守るとともに、外壁の延焼を抑制して、市街地の火災の拡大を抑える事にあります。そのために、指定区域内にある建築物の屋根は、火災時の火の粉による火災発生を防止するための屋根の性能として、①防火上有害な発炎をしないものと②屋内に達する防火上有害な溶融、亀裂などの損傷を生じないものの性能を求められ、その基準に適合しなければなりません。(建基令109条の8)
具体的な屋根の基準は、次のいずれかの方法で対応する事になります。
- 屋根を不燃材料でふく(平成12年告示1400号の不燃材料など)
- 不燃材料で造る
- 大臣認定品を使用する(NM、DR、URで始まる認定番号などの材料から選ぶ)
なお、「不燃材料でふく」とは、屋根下地材料の材質にかかわらず、屋根ふき材を不燃材料とすることをいい、「不燃材料で造る」とは、屋根ふき材のほか野地坂、たるきなどの屋根下地までを含めて不燃材料で造ることをいいます。
法22条区域内の建築物は全て対象となるのか?
「法22条区域」内での建築物で、以下のものは屋根の防火規定が免除されています。
- 茶室、あずまや
- 延べ面積が10㎡以内の物置、納屋、ポンプ室、自転車置場(バイク置場を除く)などの屋根の延焼のおそれのある部分以外の部分。
ただし、プロパン庫や危険物庫などの多量の可燃物を含む建築物は防火上、適用除外とする事はできません。
法22条の条文は以下になります。(↓クリックして下さい)
建築基準法第22条第1項
特定行政庁が防火地域及び準防火地域以外の市街地について指定する区域内にある建築物の屋根の構造は、通常の火災を想定した火の粉による建築物の火災の発生を防止するために屋根に必要とされる性能に関して建築物の構造及び用途の区分に応じて政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。ただし、茶室、あずまやその他これらに類する建築物又は延べ面積が十平方メートル以内の物置、納屋その他これらに類する建築物の屋根の延焼のおそれのある部分以外の部分については、この限りでない。
上記の建築物以外に、不燃物の物品を保管する倉庫や荷捌き場、スケート場、水泳場、スポーツの練習場などの運動施設のほか、劇場、映画館、集会場などは、防火上有害な発炎をしないものの基準に適合することになります。(平28国交告693)その具体的な屋根の構造方法については、①不燃材料で造るか、または葺くことの他、②難燃材料で造るか、または葺くこと、又は③大臣の認定を受けたもの(DW、UWで始まる認定番号などの材料から選ぶ)で適合します。この取扱などは告示編や「建築物の防火避難規定の解説2016第2版」で確認する事をおすすめします。
法22条区域内の木造の建築物は、外壁や開口部にも規制がかかるのか?
建築基準法22条の内容は「法22条区域」内の屋根の規制なので、外壁については触れておらず規制はないだろうと思いませんか?ここだけ読めばそのとおりなんですが、建基法23条で「前条第1項の市街地の区域内にある建築物・・・(以下省略)」とあるため、「法22条区域」内にある建築物の外壁は、木造建築物など(主要構造部の壁、柱、はりのうち、自重または積載荷重を支える部分の全部または一部が木材、プラスチックなどの可燃材料で造られたもの)は、その外壁で延焼のおそれのある部分の構造を、通常の火災による延焼の抑制に一定の効果を発揮するための準耐火性能(①耐力壁の外壁では、加熱開始後20分間構造耐力上支障のある変形などの損傷を生じないもの、②外壁では、加熱開始後20分間当該加熱面以外の面(屋内)の温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しないもの)の基準に適合しなければなりません(建基令109条の9)
建築基準法第23条
前条第一項の市街地の区域内にある建築物(その主要構造部の第二十一条第一項の政令で定める部分が木材、プラスチックその他の可燃材料で造られたもの(第二十五条及び第六十一条において「木造建築物等」という。)に限る。)は、その外壁で延焼のおそれのある部分の構造を、準防火性能(建築物の周囲において発生する通常の火災による延焼の抑制に一定の効果を発揮するために外壁に必要とされる性能をいう。)に関して政令で定める技術的基準に適合する土塗壁その他の構造で、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。
具体的な外壁の構造方法などについてまとめると、次のようになります。
適用される部分:「法22条区域」内の木造建築物などで、延焼のおそれのある部分の耐力壁(非耐力壁)である外壁が対象です。(外壁の開口部は対象外です。また、施工上の注意点として重要なのが、軒裏勝ちで外壁が屋根まで達っしていない場合や、天井勝ちで屋内側の石膏ボードを屋根まで達しない場合などは、軒裏部分も防火構造などにする必要があります。)
外壁の構造方法(平12建告1362):①防火構造とすること。②屋内側は厚さ9.5㎜以上の石膏ボードなどを張り、屋外側は下地を準不燃材料で造り、表面に亜鉛鉄板を張ったものとすること。③土塗真壁造で塗厚さが30㎜以上のもので、かつ、内部への炎の侵入を有効に防止できる構造とすること。④大臣の認定を受けたもの などがあります。
なお、外壁を真壁造とする場合の柱、はりの部分については、防火被覆をする必要はありません。つまり木造の柱やはりをむき出しにできます。
まとめ
- 都市計画区域内の防火・準防火地域を除く、ほぼ全域が「法22条区域」である。
- 「法22条区域」内の建築物は、屋根を不燃性能材料などで葺く、又は造る。
- 「法22条区域」内での建築物でも屋根の規制対象外のものは、「茶室、あずまや」、「延べ面積が10㎡以内の物置、納屋、ポンプ室、自転車置場(バイク置場を除く)などの屋根の延焼ライン部分以外」。
- 「法22条区域」内の木造建築物などの延焼のおそれのある部分の外壁の構造を防火構造などで造る必要がある。(開口部は対象外)
参考となる書籍としては、「建築確認のための 基準総則 集団規定の適用事例 2022年版」や、建築申請memo 2022 [ 建築申請実務研究会 ]という書籍がお薦めです。