- 特殊建築物の用途を工事中に変更しても「軽微な変更」と扱えるのか?
- そもそも「軽微な変更」って何?根拠や定義は?
- 最近、「軽微な変更」について改正があったのか?
- 「軽微な変更」に伴って「計画変更」にかかる部分がある場合は「計画変更」か?
![](https://arch-blog.net/wp-content/uploads/2023/11/ad8733825a04921cf15822ace051679e-e1699926701453-150x150.jpg)
たくみ です。
設計事務所、指定確認検査機関に長年勤めた経験をもとに難解な建築基準法について解説していきます。
- 結論として、規則第3条の2「軽微な変更」は、令和4年4月1日に改正施行され、第14号の開口部の位置及び大きさの変更について大きく緩和されました。また、計画変更の内容となる部分があったとしても、それと一体性のある他の変更部分が、規則3条の2第1項各号のいずれかに該当し、かつ、「建築基準関係規定に適合することが明らかなもの」は「軽微な変更」の対象として考えられるようになりました。
「軽微な変更」とは何か?根拠や定義について
法第6条第1項の「軽微な変更」とは、工事途中で建築物の設計の変更があった場合に、規則3条の2第1項第1号~第16号のいずれかに該当するものであって、変更後も建築物の計画が建築基準関係規定に適合することが明らかなものをいいます。
「軽微な変更」の根拠となる基準は、建築基準法施行規則第3条の2に定義されています。原則、定義されている基準以外の設計変更は「計画変更」となります。
(計画の変更に係る確認を要しない軽微な変更)
第三条の二 法第六条第一項(法第八十七条第一項において準用する場合を含む。)の国土交通省令で定める軽微な変更は、次に掲げるものであつて、変更後も建築物の計画が建築基準関係規定に適合することが明らかなものとする。
一 敷地に接する道路の幅員及び敷地が道路に接する部分の長さの変更(都市計画区域内、準都市計画区域内及び法第六十八条の九第一項の規定に基づく条例により建築物又はその敷地と道路との関係が定められた区域内にあつては敷地に接する道路の幅員が大きくなる場合(敷地境界線が変更されない場合に限る。)及び変更後の敷地が道路に接する部分の長さが二メートル(条例で規定する場合にあつてはその長さ)以上である場合に限る。)
二 敷地面積が増加する場合の敷地面積及び敷地境界線の変更(当該敷地境界線の変更により変更前の敷地の一部が除かれる場合を除く。)
三 建築物の高さが減少する場合における建築物の高さの変更(建築物の高さの最低限度が定められている区域内の建築物に係るものを除く。)
四 建築物の階数が減少する場合における建築物の階数の変更
五 建築面積が減少する場合における建築面積の変更(都市計画区域内、準都市計画区域内及び法第六十八条の九第一項の規定に基づく条例により日影による中高層の建築物の高さの制限が定められた区域内において当該建築物の外壁が隣地境界線又は同一の敷地内の他の建築物若しくは当該建築物の他の部分から後退しない場合及び建築物の建築面積の最低限度が定められている区域内の建築物に係るものを除く。)
六 床面積の合計が減少する場合における床面積の変更(都市計画区域内、準都市計画区域内及び法第六十八条の九第一項の規定に基づく条例の適用を受ける区域内の建築物に係るものにあつては次のイ又はロに掲げるものを除く。)
イ 当該変更により建築物の延べ面積が増加するもの
ロ 建築物の容積率の最低限度が定められている区域内の建築物に係るもの
七 用途の変更(令第百三十七条の十八で指定する類似の用途相互間におけるものに限る。)
八 構造耐力上主要な部分である基礎ぐい、間柱、床版、屋根版又は横架材(小ばりその他これに類するものに限る。)の位置の変更(変更に係る部材及び当該部材に接する部材以外に応力度の変更がない場合であつて、変更に係る部材及び当該部材に接する部材が令第八十二条各号に規定する構造計算によつて確かめられる安全性を有するものに限る。)
九 構造耐力上主要な部分である部材の材料又は構造の変更(変更後の建築材料が変更前の建築材料と異なる変更及び強度又は耐力が減少する変更を除き、第十二号の表の上欄に掲げる材料又は構造を変更する場合にあつては、同表の下欄に掲げる材料又は構造とする変更に限る。)
十 構造耐力上主要な部分以外の部分であつて、屋根ふき材、内装材(天井を除く。)、外装材、帳壁その他これらに類する建築物の部分、広告塔、装飾塔その他建築物の屋外に取り付けるもの若しくは当該取付け部分、壁又は手すり若しくは手すり壁の材料若しくは構造の変更(第十二号の表の上欄に掲げる材料又は構造を変更する場合にあつては、同表の下欄に掲げる材料又は構造とする変更に限る。)又は位置の変更(間仕切壁にあつては、主要構造部であるもの及び防火上主要なものを除く。)
十一 構造耐力上主要な部分以外の部分である天井の材料若しくは構造の変更(次号の表の上欄に掲げる材料又は構造を変更する場合にあつては同表の下欄に掲げる材料又は構造とする変更に限り、特定天井にあつては変更後の建築材料が変更前の建築材料と異なる変更又は強度若しくは耐力が減少する変更を除き、特定天井以外の天井にあつては特定天井とする変更を除く。)又は位置の変更(特定天井以外の天井にあつては、特定天井とする変更を除く。)
十二 建築物の材料又は構造において、次の表の上欄に掲げる材料又は構造を同表の下欄に掲げる材料又は構造とする変更(第九号から前号までに係る部分の変更を除く。)
省略(不燃材料⇒不燃材料への変更等)
十三 井戸の位置の変更(くみ取便所の便槽との間の距離が短くなる変更を除く。)
十四 開口部の位置及び大きさの変更(次のイ又はロに掲げるものを除く。)
イ 令第百十七条の規定により令第五章第二節の規定の適用を受ける建築物の開口部に係る変更で次の(1)及び(2)に掲げるもの
(1) 当該変更により令第百二十条第一項又は令第百二十五条第一項の歩行距離が長くなるもの
(2) 令第百二十三条第一項の屋内に設ける避難階段、同条第二項の屋外に設ける避難階段又は同条第三項の特別避難階段に係る開口部に係るもの
ロ 令第百二十六条の六の非常用の進入口に係る変更で、進入口の間隔、幅、高さ及び下端の床面からの高さ並びに進入口に設けるバルコニーに係る令第百二十六条の七第二号、第三号及び第五号に規定する値の範囲を超えることとなるもの
十五 建築設備の材料、位置又は能力の変更(性能が低下する材料の変更及び能力が減少する変更を除く。)
十六 前各号に掲げるもののほか、安全上、防火上及び避難上の危険の度並びに衛生上及び市街地の環境の保全上の有害の度に著しい変更を及ぼさないものとして国土交通大臣が定めるもの
2 省略
3 省略
最近、「軽微な変更」について改正があったのか?
規則第3条の2「軽微な変更」は、令和4年4月1日に改正施行されました。国土交通省の技術的助言にも通達があります。
出典:国土交通省「建築基準法施行規則の一部を改正する省令等の施行について(技術的助言)」
改正により、規則3条の2第1項第十四(開口部の位置及び大きさの変更)の部分が大きく変わりました。以前までは、①外壁部の開口部の大きさを変更する時に、有効採光・換気で用いている面積が減少する場合や、②延焼の恐れのある部分に外壁の開口部が新たに設置する場合は、「軽微な変更」の対象外として「計画変更」となっていましたが、改正によりその条文が削除されたので、①と②の「開口部の位置及び大きさの変更」に関しては「軽微な変更」として対応できるようになりました。ただし、「変更後も建築物の計画が建築基準関係規定に適合することが明らかなもの」が前提となります。
なお、「建築基準関係規定に適合することが明らかなもの」とは、「高度な計算や検討」によらず建築基準関係規定への適合が確認できるものをいいます。「高度な計算や検討」とは、例えば、避難安全検証の再計算(計画変更の影響が居室避難の範囲を超えず、居室避難の成立が簡易に確認できる場合を除く)を行うものや、日影図・天空率・構造計算などの再検討が必要となるものをいいます。
よって、「高度な計算や検討」を要する変更については計画変更が必要となります。
また、今後の法改正によって法6条1項4号(いわゆる「4号建築物」)だったものが、法6条1項3号の対象となり審査対象となるケースがあります。法改正の過渡期の建築物を計画変更する場合、軽微な変更とならずに計画変更となりうる可能性があるので、常に建築基準法の法改正には注意をしましょう。
今後の法改正の流れは、国交省のホームページ「令和4年改正 建築基準法について」を確認しましょう。
![](https://arch-blog.net/wp-content/uploads/2022/12/0110-house-building-m-150x150.png)
設計を変更する部分が「軽微な変更」に該当するかについては、その変更となる部分の工事の着手前に、申請する指定確認検査機関に事前相談しておきましょう。
「軽微な変更」に伴って「計画変更」にかかる部分がある場合は「計画変更」か?
「軽微な変更」対象となるかどうかについては、工事の設計の変更(一の変更)が規則3条の2第1項第1号~第16号のいずれかに該当するが、その設計の変更により付随的に生じるなどの一体性のある変更部分が、規則3条の2に該当しない場合(計画変更の内容)であっても、変更後の設計が明らかに建築基準関係規定に適合するものであれば、「軽微な変更」の対象となります。
例えば、庇の大きさの変更に伴う形状変更により、はね出し部分が1mを超えて建築面積が増加したが、構造耐力上主要な変更ではなく、さらに変更後も建蔽率制限に明らかに適合しているものなどの場合や、外壁のタイル割などで開口部の大きさの減少に伴い、有効採光・換気・排煙が減少するが明らかにALVS算定に適合し無窓居室ではない事がわかるものなどが該当します。(十六号はバリアフリー法などの建築基準関係規定なので、他の号との一体性は原則ありません)
なお、一体性のない設計の変更については、各々の変更に分けて「軽微な変更」の対象となるかどうかを判断する必要があります。いずれにしても、「高度な計算や検討」を要する変更については計画変更が必要となります。
これらの内容については、「建築確認のための 基準総則 集団規定の適用事例 2022年版」の書籍で詳細に記載されているため、購入される事をお薦めします。
まとめ
- 「軽微な変更」とは、設計の変更が、規則3条の2第1号~第16号のいずれかに該当するものであって、建築基準関係規定に適合することが明らかなものをいう。
- 規則第3条の2「軽微な変更」は、令和4年4月1日に改正施行され、14号の開口部の位置及び大きさの変更について大きく緩和された。
- 一体性のある「一の変更」が、規則3条の2第1項各号のいずれかに該当し、かつ、「建築基準関係規定に適合することが明らかなもの」は「軽微な変更」の対象として考えられる。
いずれにしても「軽微な変更」に該当するかについては、その変更となる部分の工事の着手前に、指定確認検査機関に確認しましょう。また、建築基準法は常に改正されているため最新の建築基準法令集などを購入し、建築基準法施行規則3条の2をご自身の目で必ず確認して下さい。