- 竪穴区画とは?基準や構造の規定を詳しく知りたい。
- 竪穴区画を免除や緩和する方法は?スパンドレルって何?
- EV昇降路や階段などの吹抜け部分には竪穴区画は絶対に必要か?
- 京アニの火災で被害が大きかった原因は竪穴区画が無かったから?
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このような疑問をかかえる設計者は多いのではないでしょうか。
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たくみ です。
設計事務所、指定確認検査機関に長年勤めた経験をもとに難解な建築基準法について解説していきます。
竪穴区画とは何?どの部分で規制がかかるの?
防火区画は4種類あります。
- 面積区画
- 異種用途区画
- 竪穴区画
- 高層区画(11階以上)
防火区画の種類のひとつとして、竪穴区画は縦方向の階段や吹抜部分に、火災や煙が1時間以上、拡大しないための防火区画のひとつです。
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竪穴区画の内容は、階数が3以上の建築物を設計する場合、必須の知識となりますね。
竪穴区画が必要となる部分
- 階段(屋内、屋外とも)
- 昇降機(エレベーターなど)の昇降路
- 吹き抜け
- ダクトスペース(PS、EPS、MBなど)
竪穴区画の基準は?
竪穴区画の基準としては、施行令112条11項に規定されています。
建築基準法施行令第112条
(防火区画)
第百十二条
前略
11 主要構造部を準耐火構造とした建築物又は第百三十六条の二第一号ロ若しくは第二号ロに掲げる基準に適合する建築物であつて、地階又は三階以上の階に居室を有するものの竪穴部分(長屋又は共同住宅の住戸でその階数が二以上であるもの、吹抜きとなつている部分、階段の部分(当該部分からのみ人が出入りすることのできる便所、公衆電話所その他これらに類するものを含む。)、昇降機の昇降路の部分、ダクトスペースの部分その他これらに類する部分をいう。以下この条において同じ。)については、当該竪穴部分以外の部分(直接外気に開放されている廊下、バルコニーその他これらに類する部分を除く。次項及び第十三項において同じ。)と準耐火構造の床若しくは壁又は法第二条第九号の二ロに規定する防火設備で区画しなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する竪穴部分については、この限りでない。
一 避難階からその直上階又は直下階のみに通ずる吹抜きとなつている部分、階段の部分その他これらに類する部分でその壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造つたもの
二 階数が三以下で延べ面積が二百平方メートル以内の一戸建ての住宅又は長屋若しくは共同住宅の住戸のうちその階数が三以下で、かつ、床面積の合計が二百平方メートル以内であるものにおける吹抜きとなつている部分、階段の部分、昇降機の昇降路の部分その他これらに類する部分
省略
この第11項本文をまとめると、以下のようになります。
- 準耐火建築物(イ-1、イ-2)や耐火建築物などの主要構造部を準耐火構造以上とした建築物で、地階や3階以上に居室があるならば、EV昇降路や階段(屋内・屋外共)などの吹抜部分は竪穴区画は必要。
- 任意で主要構造部を準耐火構造にしている場合も竪穴区画が必要。
上記の内容は、以下のように読み替えもできます。
- 「主要構造部が準耐火構造」と書いているので準耐火建築物を指しているものではないため、準耐火建築物の『ロ-1』や『ロ-2』(昔なら、ロ簡耐)は竪穴区画不要。
- 主要構造部の構造に関係なく、地階や3階以上の部分に居室が無ければ竪穴区画不要。
- 主要構造部のほどんどが準耐火構造でも一部(屋根や階段など)が不燃構造等であれば竪穴区画不要。
このように、主要構造部が準耐火構造以外の不燃構造(鉄骨等)は3階以上の居室の有無に関係なく竪穴区画は不要ですが、施行令70条の柱の防火被覆は必要となるので注意しましょう。
竪穴区画の免除と緩和
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第11項ただし書きによる免除・緩和規定が2つあります。この「ただし書き」は使う機会の多い規定だと思いますので解説します。
①.一層のみの区画免除
第11項ただし書き第1号について
具体的には、避難階の上下階一層のみに通じる竪穴区画については、その仕上・下地を不燃材料とすることにより、竪穴区画が免除される。例えば、商業施設などで、1階から2階へまたぐ吹抜けやエスカレータまわりの竪穴区画を緩和していることが多くあります。ただし、以下のような点に注意が必要です。
- この緩和は避難階にまたがる2層分の竪穴のみ対象となります。つまり、避難階をはさんだ上下3層や、複数の避難階をまたいだ2層以上の竪穴部分は対象となりません。(日本建築行政会議「建築物の防火避難規定の解説2016第2版」による)。
- この緩和部分の室の壁・天井の仕上・下地を不燃材料とする必要があります。その内装不燃化する範囲について通達で示されています。 根拠通達文:昭和44年5月1日 住指発第149号 「建築基準法施行令の一部を改正する政令の施行について」より、区画免除される竪穴部分のある階に他の室がある場合、区画されているのでない限り、その室も仕上・下地を不燃材料としなければならないとあります。ただし、回り縁、窓台その他これらに類する部分を除きます。(施行令112条第8項による)
②.住宅内の区画免除
第11項ただし書き第2号について
一戸建て住宅や長屋及び共同住宅において、階数が3階以下で床面積が200㎡以内の住宅については、その内部の竪穴は区画が免除されます。
このただし書き以外に、第11項本文にて建築物の「住戸でその階数が2以上であるもの」とあるため、これらの住戸の内部階段・吹抜けについては竪穴区画が不要と読めます。具体的には共同住宅のメゾネット住戸や店舗付き住宅を想定していると考えられます。ただし、この場合、住戸部分全体が竪穴と定義されて、メゾネット住戸とその他の部分は竪穴区画が必要となると考えれます。
その他、運用・取扱い
竪穴区画については、通達や取扱などでいろいろとルールがあります。
- 階段室型共同住宅などの階段で、小規模な廊下と一体になったものは、その部分を含めて区画することができる。(廊下が階段室の一部とみなせれば、住戸数にかかわらない)
- 自走式立体駐車場の車路部分は「用途上やむを得ない場合」とし内装制限をすると竪穴区画を免除できる。(商業施設などに併設される自走式立体駐車場が対象)
計画にあたっては、特定行政庁等の各取扱いや、運用を確認することが大切です。また、「建築物の防火避難規定の解説2016第2版」が参考になります。
竪穴区画の構造について解説。スパンドレルとは?
防火区画は、準耐火構造(以上)の床・壁とし、開口部は防火設備とすることが必要です。(令112条第19項第1項第2号)
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ここでは、竪穴区画を形成する床、壁及び開口部の構造について解説します。
竪穴区画の主要構造部の構造について
- 竪穴区画の床や壁は準耐火構造基準に適合する準耐火構造(耐火建築物の場合、耐火構造)とした床もしくは壁で区画する。
- 竪穴区画の内壁に接する外壁部分(スパンドレルという)は準耐火構造基準に適合する準耐火構造(耐火建築物の場合、耐火構造)で幅を90cm以上とし火の回り込みを防ぐ必要がある。
開口部の構造について
- 開口部の防火性能は平成12年建設省告示1360号に基づく防火設備が必要。
- 開口部の防火設備は昭和48年建設省告示2564号に基づく遮煙性能が必要。
- 常時閉鎖又は常時開放の場合は昭和48年建設省告示2563号に基づく煙感知器による随時閉鎖が必要。
竪穴区画についての注意点
竪穴区画に関していくつか注意したい点があります。
- エレベータの昇降路について、既存不適格建築物の増改築等の際、遮煙性能扉に改修を求められる場合あり。
- 竪穴区画が不要な建築物であっても、階段部分は上階に煙が漏れないように防煙垂壁で区画が必要な場合がある。
- 主要構造部が不燃構造の場合、竪穴区画は不要となるが、事故も踏まえ竪穴区画を意識した設計が望まれる。
- 階段の竪穴区画は屋外階段も含まれる。
- 屋外階段と屋内廊下との間には竪穴区画が必要である。
- 階段の竪穴区画の扉は防火設備でもよいが、面積区画において特定防火設備が必要となる場合がある。
- メゾネット型共同住宅内の階段部分は、住戸の階数が3以下でかつ、床面積合計が200㎡以内であれば、住戸内の竪穴区画は不要だが、階段の構造は耐火建築物の場合は耐火構造が要求される。(今後、法改正予定)
京アニの火災の原因は、竪穴区画の法的要求が無かった階段の竪穴部分を、意図的に放火されたからといわれと言われています。
まとめ
- 竪穴区画とは、火災時に他の階へ災や煙が拡大しないように階段などに設ける防火区画である。
- 3階建ての建築物であっても、主要構造部が不燃構造であれば竪穴区画を不要とすることができる。
- 主要構造部の構造に関係なく、地階や3階以上の部分に居室が無ければ竪穴区画は不要である。
- 主要構造部の準耐火構造であれば、法的に準耐火要求が無くても竪穴区画は必要である。
- 令112条11項ただし書きによる免除・緩和規定が2つある。
- 竪穴区画の内壁に接する外壁部分(スパンドレルという)は防火区画が必要である。
- 開口部の構造は、防火設備と遮煙性能が必要である。
竪穴区画について判断に迷う場合は、事前に役所や確認検査機関等に協議しておきましょう。
また、具体的な規定は、「建築物の防火避難規定の解説2016(第2版)」や「基本 建築関係法令集[法令編][告示編]」の書籍で必ず確認しましょう。