- 木3共って何の略?準耐火建築物で適合するの?メリットはあるのか?
- 木3共の基準(告示255号)がわかりにくい
- 木3共は具体的どうすれば基準に適合するの?
- 結局、敷地内に3m通路や避難上有効なバルコニーの設置は両方必要なのか?
木造3階建て共同住宅を計画する時、このような疑問を持ったことはないでしょうか?この記事を読めば、疑問が解消できるはずです。
たくみ です。
設計事務所、指定確認検査機関に長年勤めた経験をもとに難解な建築基準法について解説していきます。
結論からいうと、木3共とは3階建ての木造共同住宅の1時間準耐火建築物(イ-1)を指していて、鉄骨造などと比べローコストであるため、建築主にとってメリットがあると言えます。しかし、敷地周囲に3mの空地や、避難上有効なバルコニーや開放廊下・防火設備が必要だとか色々とややこしい規定があるのですが、大きく分けて3パターンの組み合わせ基準のいずれかに適合させればOKです。
木3共とは?どんなメリットがあるのか?
木3共(もくさんきょう)とは、木造の3階建て共同住宅を省略した呼称です。
通常であれば、3階を共同住宅など(特殊建築物)にする場合は、耐火建築物としなければなりませんが、下宿、共同住宅、寄宿舎については、各宿泊室などが小規模に区画されていたり、在館者が特定されていることなどにより、他の特殊建築物に比べ防火上、避難上有利な条件を有していることから、一定の条件に合えば耐火建築物としなくとも1時間準耐火建築物(イ-1)とする事が可能となります。なお、木造に限らず、鉄骨造でも可能です。
- 地階を除く階数が3、延べ面積が1500㎡以下であること
- 3階を下宿、共同住宅または寄宿舎の用途に限定され、防火地域以外の区域内にあること
- 主要構造部をイ-1準耐火建築物とする(1時間準耐火基準:令和元年告示195号・大臣認定品)
共同住宅などの用途などに限定されますが、耐火建築物ではなくイ-1準耐火建築物にできるならローコストにできそうですね。
木3共の告示255号の法文について
木3共の基準について、まずは法文を読んでみましょう。
平成27年国土交通省告示255号(令和3年改正)を引用します。
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建築基準法第27条第1項に規定する特殊建築物の主要構造部の構造方法等を定める件
第一 建築基準法施行令(以下「令」という。)第百十条第一号に掲げる基準に適合する建築基準法(以下「法」という。)第二十七条第一項に規定する特殊建築物の主要構造部の構造方法は、次の各号に掲げる建築物の区分に応じ、それぞれ当該各号に定めるもの(次の各号のうち二以上の号に掲げる建築物に該当するときは、当該二以上の号に定める構造方法のうちいずれかの構造方法)とする。
一~二 中略
三 地階を除く階数が三で、三階を下宿、共同住宅又は寄宿舎の用途に供するもの(三階の一部を法別表第一い欄に掲げる用途(下宿、共同住宅及び寄宿舎を除く。)に供するもの及び法第二十七条第一項第二号(同表二項から四項までに係る部分を除く。)から第四号までに該当するものを除く。)のうち防火地域以外の区域内にあるものであって、次のイからハまでに掲げる基準(防火地域及び準防火地域以外の区域内にあるものにあっては、イ及びロに掲げる基準)に適合するもの 一時間準耐火基準に適合する準耐火構造とすること。
イ 下宿の各宿泊室、共同住宅の各住戸又は寄宿舎の各寝室(以下「各宿泊室等」という。)に避難上有効なバルコニーその他これに類するものが設けられていること。ただし、各宿泊室等から地上に通ずる主たる廊下、階段その他の通路が直接外気に開放されたものであり、かつ、各宿泊室等の当該通路に面する開口部に法第二条第九号の二ロに規定する防火設備が設けられている場合においては、この限りでない。
ロ 建築物の周囲に幅員が三メートル以上の通路が設けられていること。ただし、次に掲げる基準に適合しているものについては、この限りでない。
(1) 各宿泊室等に避難上有効なバルコニーその他これに類するものが設けられていること。
(2) 各宿泊室等から地上に通ずる主たる廊下、階段その他の通路が、直接外気に開放されたものであり、かつ、各宿泊室等の当該通路に面する開口部に法第二条第九号の二ロに規定する防火設備が設けられていること。
(3) 外壁の開口部から当該開口部のある階の上階の開口部へ延焼するおそれがある場合においては、当該外壁の開口部の上部にひさし等が防火上有効に設けられていること。
ハ 三階の各宿泊室等(各宿泊室等の階数が二以上であるものにあっては二階以下の階の部分を含む。)の外壁の開口部及び当該各宿泊室等以外の部分に面する開口部(外壁の開口部又は直接外気に開放された廊下、階段その他の通路に面する開口部にあっては、当該開口部から九十センチメートル未満の部分に当該各宿泊室等以外の部分の開口部がないもの又は当該各宿泊室等以外の部分の開口部と五十センチメートル以上突出したひさし等で防火上有効に遮られているものを除く。)に法第二条第九号の二ロに規定する防火設備が設けられていること。
以下省略
長すぎるし、難しすぎる・・・
この告示が瞬時にイメージできる人はすごいです。
この告示の内容を3つのパターンに分けて解説します。
木3共の基準は3つのパターンに分けることができる
告示255号の木3共の基準は次のような3パターンに分けられます。
パターン1 | パターン2 | パターン3 | |
各宿泊所に避難上 有効なバルコニー等の設置の要否 | コニーの設置必要 | ①避難上有効なバル① 確保 ・廊下等に面する 開口部の措置が必要 | 廊下等の開放性の|
建築物の周囲の 通路の確保の要否 | 必要 | ②3mセットバック必要 | ②3mセットバックーの設置 ・避難ハシゴ降下位置からの敷地内通路 ②廊下等の開放性の確保 ・廊下等に面する開口部措置 ③上階延焼防止の措置 | ①避難上有効なバルコニ
非常用進入口の設置 (代替進入口)の要否 | 設置(代替進入口) | 3階に非常用進入口の設置(代替進入口) | 3階に非常用進入口の設置(代替進入口) | 3階に非常用進入口の
特徴 | 広い敷地が必要 | 開放廊下・屋外階段 の設置が必要。 | 広い敷地が必要。狭小地でも条件にあえば建築可能 |
上表を図に表すと以下のようになります。
パターン1:屋内廊下・屋内階段などで3m通路が必要な場合(避難上有効なバルコニーが必要)
なお、上図の②外壁から境界線までの離隔距離3mは、令和4年木造建築物の防・耐火設計マニュアルの改訂により、避難上有効なバルコニー面から境界線まで3m必要ということに変更されています。
パターン2:開放廊下、屋外階段で3m通路が必要な場合(避難上有効なバルコニーは不要)
パターン3:開放廊下・屋外階段などで3m通路が不要の場合(避難上有効なバルコニーが必要)
✔ ここでいう、「開放廊下、屋外階段」の基準は、下のような定義となります。
- 屋外階段の基準:階段の中間踊り場での開放部分の開口面積が2㎡以上あること。2戸1住宅の場合。
- 開放廊下の基準:廊下の手すり天端から上部垂壁までの高さが1m以上あること。
✔ ここでいう、建物周囲の3m通路については、独特の基準があり、下のような定義になります。
- 居室の開口部が隣地に面する場合、その開口部のある外壁に面する通路は道まで幅3m通路が必要。
- 居室の開口部が道路にのみ面する外壁面には幅3m通路は不要。
✔ ここでいう、外壁の開口部から当該開口部のある階の上階の開口部へ延焼するおそれがある場合の基準や、各宿泊室などの外壁開口部などの基準は下のような定義になります。
- 外壁の上下階の開口部間は距離2m以上離隔するか、庇やバルコニーなどで延焼防止が必要。
- 3階の宿泊室などの外壁の開口部及び宿泊室など以外に面する開口部に防火設備が必要。
✔ 避難上有効なバルコニーの基準は各特定行政庁の取扱もあるので必ずHPを確認して下さい。この木三共のバルコニーの基準については、「堺市建築基準法取扱い集」が一つの参考になります。
階段と廊下の開放性については、建築基準法の一般的な基準とは異なる解釈ですね。念のため、指定確認検査機関にも確認しましょう
令和4年の木造建築物の防・耐火設計マニュアル第2版改訂版のQ&Aも確認しておきましょう。最新のマニュアル本を購入する事をお薦めします。特に通路幅3mの記述が第1版のマニュアルから変わっている点に注意しましょう。
結局、敷地内に3m通路や避難上有効なバルコニーの設置は両方必要なのか?
敷地内の建物周囲に3m通路をとれない計画が圧倒的に多いのではないかと思います。したがって、3m通路をとれないのであれば、上段パターン3の避難上有効なバルコニー+開放廊下+開口部防火設備等の基準に適合すればよいことになります。ただし、延べ面積が1000㎡をこえる場合には、建築基準法施行令128条の2第1項の規定により、原則として建物周囲に幅員1.5m以上の通路を設ける必要があります。
注意すべき点としは、避難上有効なバルコニー(連続バルコニーなどを経て安全な場所へ避難できるもの)の奥行きの寸法は75cm以上、床の構造は準耐火構造以上が必要となっています。この事については、”木造3階建て共同住宅等の技術的基準”(準耐火建築物の防火設計指針 建設省住宅局建築指導課 日本建築主事会議監修)に規定されていますが、各特定行政で避難上有効なバルコニーの面積や構造規定の取扱い基準が別途定められている場合がありますので、事前に確認が必要です。
なお、3階には別に建築基準法施行令126条の6の非常用進入口(代替進入口)の設置が必要です。その設置が必要となる道に通ずる幅員4m以上の通路に面する外壁面で、避難上有効なバルコニーが設置されている場合の通路の測り方については、木造3階建共同住宅等であれば消防車の接車ではなく、はしごなどを用いた進入を想定していることから、バルコニーの外側ではなく、外壁面からの幅員として良い事になっています(平27国住指558・国住街40)
非常用進入口(代替進入口)などの具体的な基準については防火避難規定の解説などの書籍で確認しておきましょう。
まとめ
- 木3共(もくさんきょう)とは、木造の3階建建て共同住宅を省略した呼称である。
- 防火地域以外の区域内にある地階を除く階数が3、延べ面積が1500㎡以下かつ、3階の用途を下宿、共同住宅または寄宿舎とした建築物は主要構造部をイ-1準耐火建築物とすることができる。
- H27告示255号の木3共をおおまかにまとめると3パターンになる。
- 建物周囲に幅3m通路をとれないのであれば、避難上有効なバルコニー+開放廊下+開口部防火設備等の基準に適合すればよい。