- 面積区画が必要な対象建築物の規模や用途は?
- 面積区画の対象に免除や緩和、例外はないのか?
- 面積区画の要求される面積が異なる場合があるのはなぜか?
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たくみ です。
設計事務所、指定確認検査機関に長年勤めた経験をもとに難解な建築基準法について解説していきます。
防火区画は、建築物内部をいくつかの範囲に区画して、火災を区画内に閉じ込めて火災の拡大を防止することです。火の燃え広がりを抑えて、人の避難や消火活動をしやすくする事が目的です。防火区画には、主に面積区画、壁穴区画、異種用途区画の3種類があり、それぞれが、各避難経路への火や煙の侵入を防ぎます。
面積区画とは?対象となる建築物は何か?
面積区画とは、大規模な建物で火災が発生した場合に、燃え広がらないように一定の範囲内で耐火構造の壁や床などで防火区画を行い、人の安全な避難経路を確保するために、非常に重要な役割を果たすものです。
面積区画は、主要構造部の性能や法規制による耐火要求の有無に応じて区画すべき面積が異なります。以下の 1)、2)、3)の項目ごとに見ていきます。
1) 耐火建築物又は準耐火建築物などの面積区画(令112条1項)
①対象となる建築物は、
- 主要構造部を耐火構造とした建築物
(耐火建築物とは限定していないことに注意が必要です)
- 主要構造部を準耐火構造等とした建築物
(法2条9号の3イ若しくはロの建築物)
・イの建築物:準耐火構造(1時間準耐火イ-1、45分準耐火イ-2)
・ロの建築物:外壁耐火(ロ-1準耐火)、不燃構造(ロ-2準耐火)
(法27条、法61条の規定によらない任意の準耐火建築物の場合です。法26条による1000㎡防火壁)
*法27条(耐火建築物や準耐火建築物などにしなければならない特殊建築物)や法61条(防火地域や準防火地域内で階数や規模に応じて耐火建築物や準耐火建築物などにしなければならない建築物)については、別の機会に説明したいと思います。
②対象除外となる建築物の部分は、
- 用途上やむを得ない{劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場}の客席、体育館、工場等の部分(不燃性物品を保管する倉庫なども含む場合があります)
- 階段室、昇降機の昇降路の部分(乗降ロビーを含む)で、耐火構造若しくは1時間準耐火構造の床や壁、又は特定防火設備で区画したもの
③区画面積 及び 区画の構造は、
- 原則として、床面積1,500㎡以内ごと
- 自動式の消火消火設備(スプリンクラー等)を設けた部分の床面積の1/2を除いて計算してよい。(この規定は令112条すべての項に適用可能です)
- 耐火構造若しくは1時間準耐火構造での床や壁、特定防火設備で区画が必要
(区画する壁・床は、建築物が耐火建築物ならば、耐火構造が必要となり、準耐火建築物ならば、1時間準耐火構造以上が必要となります。)
2)主要構造部を準耐火構造(45分)とした建築物の面積区画(令112条4項)
①対象となる建築物は、
- 法27条3項又は法61条の規定により、45分準耐火建築物(イ-2)又は外壁耐火のロ-1準耐火建築物としたもの
②対象除外となる建築物の部分は、令112条6項による
次に該当する建築物の部分で、天井と壁の室内部分を不燃材料又は準不燃材料としたもの
- 体育館、工場の部分
- 階段室、昇降機の昇降路の部分(乗降ロビーを含む)
③区画面積 及び 区画の構造は、
- 原則として、床面積500㎡以内ごと
- 自動式の消火消火設備(スプリンクラー等)を設けた部分の床面積の1/2を除いて計算してよい。(対象となる全ての部分に設けた場合は、1000㎡以内ごとに区画できます)
- 耐火構造若しくは1時間準耐火構造での床や壁、特定防火設備で区画が必要
3)主要構造部を不燃構造又は1時間準耐火基準に適合する準耐火構造とした建築物は、1000㎡以内ごとに区画(建基令112条5項)
①対象となる建築物は、
- 法27条3項又は法61条の規定により、1時間準耐火建築物イ-1、不燃構造のロ-2準耐火建築物としたもの
②対象除外となる建築物の部分は、令112条6項による
次に該当する建築物の部分で、天井と壁の室内部分を不燃材料又は準不燃材料としたもの
- 体育館、工場の部分
- 階段室、昇降機の昇降路の部分(乗降ロビーを含む)
③区画面積 及び 区画の構造は、
- 原則として、床面積1000㎡以内ごと
- 自動式の消火消火設備(スプリンクラー等)を設けた部分の床面積の1/2を除いて計算してよい。(対象となる全ての部分に設けた場合は、2000㎡以内ごとに区画できます)
- 耐火構造若しくは1時間準耐火構造での床や壁、特定防火設備で区画が必要
以上のように、面積区画は、建築基準法施行法令112条1項から6項までに規定されています。 なお、同施行令7項から10項までに規定されている高層区画とは、建築物の高層部における面積区画の特別なルールとして位置づけられています。
また、令和元年に定められた「延焼防止建築物」や「準延焼防止建築物」にも適用されます。さらに、「火災時対策建築物(建築基準法21条1項に規定する建築物のうち耐火建築物以外の建築物)」や「避難時対策建築物(建築基準法27条1項に規定する建築物のうち耐火建築物以外の建築物)」についても、原則として主要構造部が準耐火構造の建築物と同様に扱うことになっていますが、この新しい内容を使いこなせるような物件がたくさん出てくるのかは疑問です。
面積区画の対象に例外はないのか?
あります。例えば、1500㎡の倉庫や工場に大規模なひさしがある場合、ひさし下が荷捌きスペースとして利用され床面積に算入される部分で、外気に十分に開放されている(経験上、4面中2面以上は開放が必要)部分については、令112条1項1号その他の用途の部分を適用し、荷捌きスペースを外部ととらえ面積区画の対象から外すことができます。ただし、店舗などの外部売場などは対象外とはなりません。
まとめ
面積区画は、建築物の主要構造部や耐火の要求の有無によって、一定の範囲内で耐火構造の壁や床などで防火区画を行い、火災の拡大を抑える防火区画の一つだということが分かりました。他の防火区画である竪穴区画や異種用途区画についても別の機会に解説していきます。
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